マイケル・ティルソン・トーマス、MTT、マーラー 千人の交響曲

マーラー千人の交響曲レコーディング完全リポート:第3日目

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マーラー「千人の交響曲」レコーディング完全リポート:第3日目

昨日2日目でティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団らしい水準に達することができた「千人の交響曲」のレコーディング。

果たして昨日以上の演奏は出るのか?

今日は昨日までとバンダの位置に変更がありました。昨日までは最上階で吹いていたのですが、今日はロジェ(2階)にセッティングです。

私の席も今日はロジェのLカテゴリー。やや上手寄りの2階前方の席です。

今回の音楽づくりは?

演奏は、昨日よりさらにアンサンブルの精度が上がってきた印象を受けました。聴いていて、こんなこともあんなこともやっているという箇所がたくさんあったのですが、いっぱいありすぎて、やはり評論家みたいにメモを取りながら聴かないと、後から思い出すのは難しい。

音楽づくりとしては、これは今までリリースした声楽つきの作品全部に共通するのですが、声とオーケストラの一体化した音楽を追求しており、ソロ楽器と声の組み合わせ、声とオーケストラのバランスに徹底的にこだわっています。特にコンサートマスターのバランチックとの組み合わせは聴きどころ(私は、今のサンフランシスコ交響楽団の状態は誰のおかげ?と考えたときに彼の貢献が非常に大きいと思っています)。

さらに歌手間のアンサンブルの完成度も非常に高い。カーテンコールのとき、女性歌手陣がMTT入れて円陣組んでいましたが、それくらいのチームワークでした。

今日は、MTTも左手を腰にあてて振っているところがいくつもあったのですが、余裕のない日にはこのポーズは出ないので、だいぶ心境的に遊べる部分があったのだと思います。

録音の視点から

それでもノーミスで通過することは難しく、今日は第一部の再現部に入るところで、シンバルの一人が1小節早く出てしまったのですが(正しいところでも入れたので、シンバルが2回鳴った)、それ以外に大きなミスはありませんでした(細かくあげれば、フルートがフレーズをおさめるときに音がかすれたところがあったとか、1箇所クラリネットのリードが鳴ったとかはある)。

客席の咳も肝心なところで咳をする人はやはりあちこちに現れたものの、今日はMTTも振り返ったりはしませんでした。この咳なのですが、咳が出ると周りの人たちが一斉にバッとそっちを見て牽制したりして、もはや客席一丸。

演奏のキモは?

私も応援モードなために障害物競走の心境から抜け出すことは難しいのですが、それでも3回聴いて一番心に感じたことは、全曲通してリスクテーキングだということ。

非常に難易度が高く、失敗するかもしれないような表現や、ギリギリまで追い込んでのるか反るかのスレスレのことを最初から最後までずーっとやっているのです。そして全員が一つになってチャレンジしている。千人はティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団コンビのマーラー・サイクルの集大成であるとともに、最大級のチャレンジなのだと思います。

夫はこういうことを成し遂げるMTTの執念に涙が出たそうです。帰ってから、彼を突き動かすエンジンは何なのかと話をしました。

今日はこの3日間で一番客席も沸いたし、MTTも出来に納得しているのではと窺える態度でした。

それにしてもサンフランシスコのお客さんの送る声援があたたかい。オーケストラはもちろん、コーラスに対しても心から称えているという感じがします。それを見ていて、日本人がこんな風に日本のオーケストラと一緒になって喜べる日は来るのかなと思いました。

私はミュージシャン側が自己変革することは難しいだろうと思っています。聴き手の意識から変わらないと状況は変わらないのではないでしょうか。

(2008.11.22)

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