マイケル・ティルソン・トーマス、MTT、マーラー 千人の交響曲

マーラー千人の交響曲レコーディング完全リポート:第2日目

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マーラー「千人の交響曲」レコーディング完全リポート:第2日目

波乱の初日から1日置いて録音2日目。

初日を聴いて、一通りどんな練り上げなのかがわかったので、今日は私も落ち着いて聴けそうです。

本日の席は、サイドボックスのV(上手側)。オーケストラフロアのサイドの一段高くなっている席です。デイビスホールでは、値段がロジェと同じなこのサイドの席は人気がない模様。私は初めて座ったのですが、舞台もよく見えるし、周りの人の迷惑も被らないし(アメリカでは重要)、音も良かったです。

録音するのでうんぬんのお願いに続いて、コンマス、歌手、MTT登場。出てきたMTTを見たとき、

「何だその髪の毛は?!」

髪の毛のなでつけ具合が、いつもの5割増しでぴたーっとなっていたのです。でも今日はピリピリしてなさそう。

演奏スタート。

本日の出来は?

初日よりもオーケストラも余裕がある感じで、問題のトランペットのマーク・イノウエも危なげなし。立ち直って良かった。

MTTもノリノリ(マーラーでもノリノリ)で、いつもの調子に。やはりピリピリは伝染するし、メンタルは大きいのだと実感。

今日の席は歌手が近かったこともあり、細かいニュアンスまで聴こえたのですが、テノールのAnthony Dean Griffeyが非常に素晴らしかった。LumenもJungfrau もすごくピアノで歌っていたのですが、それはそれは美しかったです。ジンマンも千人に彼を起用する予定とか。

歌手は8人の水準が揃っています。

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【追記】後から見たら、5月に聴いたサロネン&ロス・フィルの「大地の歌」のテノールもGriffeyでした。その時はイマイチだとかさんざん言っていた私。MTTとセットで出てきたとたんに絶賛するとは、ずいぶんな態度である。
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曲の構成としては、第一部は早めのテンポで快調にすすみ、第二部はたっぷりしたテンポで聴かせるというもの。第一部の再現部に入ったところのVeniの「ヴェー」を伸ばしていたのが、そんなことやっているのは聴いたことないと思いました。

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【追記】ティルソン・トーマスは昔から再現部の「ヴェー」を伸ばしているそうです(Viva Voceで語っていました)。何かそれがラストに向かっていくという表明だと考えているらしい。
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本日の客席は?

問題の咳なのですが、今日は第二部冒頭の部分はほぼ問題なく通過。そのかわり、780小節(練習番号106)からの部分で、女性が咳。初日ほど怖くはありませんでしたが、やはりMTTはしばらく客席を向いていました。

ティルソン・トーマスの音楽を考えたとき、千人やるならここに全曲の中で一番こだわってくるであろうことは、彼を聴いてきた人であれば容易に想像つくだろうと思いますが、2700人も聴衆がいればいかんともし難いのだと思います。

トラブルなく最後までたどり着けるか?

まず、初日に落ちてしまった児童合唱。今日は無事入ることができてめでたし。

そしてkomm、Blicket aufと来て、神秘の合唱につながる一連の部分が素晴らしかったです。オーケストラ、合唱、ソリストとすべてが揃っていて、めくるめく感じがしました。MTTも渾身のニュアンスをつけていました。

これは初日からそうだったのですが、一つひとつの細部の作り込みがすごいのです。

SFSコーラスは特別うまいとは思いませんが、十分合格点だと思います。細かいニュアンスの要求にきちんと応えていましたし、相当練習したのだろうという印象を受けました。

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【追記】SFSコーラスは、今回の千人を視野に入れて新しい合唱指揮者を迎えて臨んだそうです。
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神秘の合唱もうまく行っていたのですが、合唱にソプラノのソリストがかぶさって入る部分で、ソプラノの2が1拍早く入るというまさかの痛恨ミス。その瞬間凍りつくかのような思いがしました。

このソプラノの2は神秘の合唱の鬼門だと私は常々思っています。今回せっかく高音をぶつけないできちんとピアノで歌えるし、息も続くし良かったと喜んでいたのに。

細かいミスはいくつかあったものの、パーツの表現だけではなく、作品全体を大きく浮かび上がらせることができた会心の演奏だったと思います。

最後、MTTは客席後方のバンダに向かって指揮するために客席の方を向いたのですが、そのまま客席に向かって指揮をしてフィニッシュ。大きな声援がずっと続きました。

後はおっちゃんたちにがんばってもらおう

今日ぐらいの出来のものがベースにあれば、後は録音チームの力(オタッキーそうな気配漂うおっちゃんたちが集結している)と他の日に録ったものを合わせて何とかしてもらえるのではないでしょうか。MTT&SFSらしい千人を作り上げることができて、本当に良かった。

そしてMTTは何度もジャンプしたり、譜面台より小さくなっちゃったり、いつも以上に動いていたのに、なでつけた髪の毛は一糸乱れることなく、90分間セットされたままの状態をキープ。千人の完成度を上げてきた執念とあわせ、改めて

恐るべし、マイケル・ティルソン・トーマス!!

(2008.11.21)

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