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フィラデルフィア管弦楽団の破産申し立てニュースへの反応続々

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フィラデルフィア管弦楽団の破産申し立てニュースへの反応続々

名門ファイラデルフィア管弦楽団が、連邦倒産法の Chapter11(民事再生)の申し立てをし、法的手段を利用して再建を目指すことになったというニュースは世界を駆け巡りました。

週明けからいろんな記事が出ていますので、目に付いたものをご紹介します。

まずは地元から

地元フィラデルフィアでは Inquirer 紙が、この4年ほどの経営悪化から今日までを報道し続けて来ました。

(最近の記事)
Philadelphia Orchestra's bankruptcy filing creates a global shock
April 19, 2011| By Peter Dobrin, Inquirer Music Critic

'A chance . . . to save this great treasure'
April 17, 2011| By Peter Dobrin, Inquirer Music Critic

Philadelphia Orchestra seeks bankruptcy reorganization
April 16, 2011| By Peter Dobrin, INQUIRER MUSIC CRITIC

 

記事の内容をまとめると、

  • この1年くらい破産申し立てについて検討してきた
  • 1989年に255000人いた定期公演の観客が現在150000人に落ち込んでいる。そもそもこの人数ではフィラ管規模のオーケストラを支えるのはムリ
  • 今期13百万ドルの赤字で緊急のファンドレイジングをしたが、5百万ドル足りない状況
  • オーケストラのミュージシャンとの契約期限がきているものの、年金・給与等の条件で折り合い付かなかったこと、地域で一番大きい財団から新たな資金を受けられなかったこと等が申し立てへの流れを決定的に
  • 法的手段を利用するのが再生への近道であるとの判断になった。事業を続けながら再建を目指す。再生計画が固まるまで今年いっぱいはかかる。最悪シナリオ(合意に至らない場合)の清算を避けるため、緊急のファンドレイジング(目標214百万ドル)を行う。当面の資金として11月までに12百万ドルが必要
  • 再生計画では、キンメル・センターの賃料、現役ミュージシャンの給料・年金、退職ミュージシャンの年金等が見直しされる見込み
  • フィラ管がフィラデルフィアの宝だという認識は各方面で一致しているが、具体的な道筋はこれから

追記:債権者毎の具体的な債務額

ニューヨーク・タイムズ
Details Emerge of an Orchestra’s Bankruptcy Plea
By DANIEL J. WAKIN Published: April 20, 2011

辛口意見

このフィラ管のニュースで「アメリカのオーケストラは大変!」と一般化して考えた人も多かったようですが、辛口意見もあり。ワシントン・ポスト

Orchestral futures: is Philly’s tragedy a harbinger or merely a warning?
By Anne Midgette Posted at 10:25 AM ET, 04/19/2011

記事の趣旨は、オーケストラと言っても“ビジネス”なのだから、経営がうまくいかないところが出て来るのはあたりまえ。市場から退場する会社があっても誰も驚かないのに、オーケストラが経営危機になると「クラシック音楽の危機」であると結びつけるのはおかしい。

ただ、どこも“図体が大きい”まま運営していくやり方は限界にきていて、新しいビジネス・モデルに転換すべきときが来ているのではないか?ということで、身の丈に合っていながら革新的でもある活動として、セント・ルークス室内管弦楽団のホールと活動が紹介されています。

私はデトロイト~フィラデルフィアと一連の騒動を見てきて、労-使が対立関係になるという構図に何か違和感を覚えます。オーケストラ団員を(組織設計上弱者と想定されている)労働者と位置付け、雇用契約と組合からなる仕組みに硬直化の原因があるのでは?もっとオーケストラに適した組織形態を考える時期なのかもしれません。

例外もある

いろんな記事で「こんな経済状況下でも攻め続けているオーケストラもある」とロサンゼルス、サンフランシスコをあげているのを見ました。

最後にLAフィルのプレジデントのデボラ・ボルダ氏が、先週ロンドンのアート・マネージャーのカンファレンスで講演した内容についての記事をご紹介します。

スピーチ内容をそのまま見ることができます
Many voices to many ears
(内容は、ソーシャルメディアの成長などオーケストラを取り巻く環境が大きく変わっている。時流をよく見て、より幅広い層の多くの人々にリーチする努力をすべきである。これらに関するLAフィルの取り組みの成果と意思決定の判断基準について)

この強さを見よ!!

という感じですが、「アメリカのオーケストラ」とひと括りにできないほど多様化しているのがアメリカ。そして法もビジネスの手段として活用するのがアメリカ。だからフィラデルフィア管弦楽団もきっとアメリカらしく甦るのではと私は思います。

 

例外をあげている記事のひとつ
Philadelphia Orchestra files for bankruptcy protection
By Fred Mazelis, 18 April 2011

 

おまけ:イギリスの記事

資金は小口で集めた方がよいかもしれないマイクロ・ファイナンスの活用を紹介した記事
The dangers of classical philanthropy
Posted by Tom Service Tuesday 19 April 2011 16.18 BST guardian.co.uk

ルツェルン音楽祭のブーレーズ肝いりのオペラハウス。大口のドナーからの資金で賄われる計画であったところ、完成前に寄付予定者が死亡。遺産の使途をめぐり訴訟になってしまい、資金計画に暗雲が。。。だから少ない大口寄付を頼りにするのは危険、という話。

(2011.4.20)

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