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ラベック姉妹のプーランク&プロコフィエフ交響曲第5番

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ラベック姉妹のプーランク&プロコフィエフ交響曲第5番

カーネギーホール

ティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団のニューヨーク公演。

昨日のガラ・コンサートは、1曲が短く、じっくり聴かせるという感じではなかったため、今日のコンサートからが本番です。

リゲティ

1曲目は、リゲティのLontano(イタリア語で遠いという意味だそう)。

リゲティは、ティルソン・トーマスが最近興味をもって取り組んでいる作曲家だそうですが、この曲、メロディとリズムがありません。

楽器が増減しながらハーモニーが変わるだけ。

サンフランシスコ交響楽団は、普段から「つーーっ」とやっている(そう聴こえる)オーケストラなので、まさにうってつけ。ずっと「つーーっ」が続きます。そしてこういうどこ弾いているかわからなくなりがちな曲を振ることにかけては、MTTは技術があるのです。あの棒だったら、ほとんどの人は入れるのではないかと思います。

曲の終わりは、楽器の音が消えても音楽は続くという意味なのでしょうが、何小節か指揮だけが続きます。この曲をラジオで聴いたとき、音が消えてから拍手までえらく長いと思っていたら、こういうことだったのです。

プーランク

2曲目はラベック姉妹のピアノで、プーランクの2台のピアノのための協奏曲。

ラベック姉妹を生で聴くのは初めてだったのですが、姉と妹でキャラが全然違うのですね。びっくりしました。そして激しいピアノでした。

私はこの曲が好きで、家でCDをたくさん聴いていたのですが、最初生で聴こえるピアノの音量よりも、オーディオでかけていた音の方が大きくて最初は「アレ?」と思いました(録音はピアノをマイクで拾っているので実際のバランスと違う)。

ここでも2楽章のピアノの後に弦が細ーく入ってくるところの歌い方が、サンフランシスコ交響楽団ならでは。薄絹がふわっと浮いている感じでした。

CD(記事の最後に紹介しています)を聴いたとき、1楽章の終わりの音楽が納得できない感じがしたのですが、今日は違和感なかったです。解釈なのか版が違うのかわかりませんが。

ラベック姉妹のピアノは、私の好みとはちょっと違っていましたが(私は、体重乗せて弾くピアニストが好きではないのです。ラベック姉妹は小柄だから仕方ないのかもしれませんが)、ピエロっぽいミニドレスにスパッツの色違いの衣装とヘアスタイルが、似合っていておしゃれだったので、それはそれで楽しめました。

アンコールに連弾の小品を弾いたのですが、曲目紹介をフランス語でしゃべっていたので、わかりませんでした。

プロコフィエフ

そしてメインの曲は、プロコフィエフの交響曲第5番。

サンフランシスコ交響楽団は、プロコフィエフを昨年フェスティバルでも集中して取り上げていましたし、蓄積があるのだと思います。MTTも暗譜。

1楽章は非常に大きく歌っていて、堂々としたスケールでした。ティルソン・トーマスがスケール大きく描くときというのは、マーラー9番の1楽章とか、昨年のショスタコーヴィチ5番の終楽章などでも聴かせてくれましたが、造形が素晴らしいと思います。

2楽章はノリノリでした。細かい表現まで詰められていて、全ての辻褄が合うような印象です。

どのパートも健闘していたと思いますが、私は弦楽セクションの進境が著しいと思いました。普通にコンサート日程をこなしていくだけでは、ああはならないのではないでしょうか。何かプロジェクトでも組んで組織で取り組んだかのような成果になっています。

とにかく表現が多彩で自由自在。

終楽章は、MTTのリズム感が炸裂。最後もありえないくらい決まりました。

私の席の周りの人たちもすごいオーケストラだと言っていましたが、私もそう思います。このコンビはいったいどこまで進化するのでしょう?

アンコールもしっかりありました。ティルソン・トーマスがしゃべっていましたが、マイクが入っていなかったので、何言っているのかわかりませんでした。多分、サンフランシスコのシーズン・オープニングでやったドリーブのバレエ「シルヴィア」から「バッカスの行列」だと思います。

サンフランシスコ交響楽団の音は、本当に薫り立つかのように立ち昇る音です。そして一つになった音楽が生き生きと動きます。

今日も私は大絶賛。はるばるやって来て良かった!

おまけ

今日、私の前の席に座ったおじいさん。白髪で後頭部に毛がないのですが、残っている頼りなげな毛が地肌から直角に生えているのです(静電気かと思うほど)。そしてジャンパー着て、ズボンのポケットに折りたたみ傘を突っ込んでいて、一人で来ていて休憩時間はずっとクロスワードパズルをやっている。でもオーケストラコンサートがよりどりみどりなニューヨークで、サンフランシスコ交響楽団のこのプログラムを選び、ベストポジションの席を確保していて、演奏中は、頭一つ動かさない。本当に好きなんだと思いました。

(2008.9.25)

プーランクのおすすめCD

私が専ら聴いていたのは、このCDです。エリック・ル・サージュのピアノが好きなので。

Tag: コンサート

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