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YouTube Symphony のコンサートを見ての感想

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YouTube Symphony のコンサートを見ての感想

オンライン上での初のオーケストラ・プロジェクト、YouTube Symphony Orchestra (ユーチューブ交響楽団、ユーチューブ・シンフォニー)の4/15カーネギーホールでのコンサート映像、とても楽しめました。

全15曲がいわば全く違う言葉で書かれており、それを短期間に揃えることは並大抵のエネルギーではなかったのではないでしょうか。

曲目リスト→「おかか1968」ダイアリー

今回事前の個人練習にもYouTubeを活用し、個々人の練習をビデオで撮ったものをやりとりして準備したそうですが、それでも実際のリハーサルは3日間。ジュリアード音楽院での合宿は、1日12時間も練習が続いたというから相当ハード。オーケストラ・メンバーの皆様、お疲れ様でした。それでも疲労より何倍もの充実感があったのではないかと思います。

目を引いたのは、このプロジェクトに賛同し、協力した芸術団体、アーティストの顔ぶれ。まさにアメリカのクラシック音楽界の総力結集。この指止まれに集まるスピードとエネルギーには驚きました。

YouTube は、このプロジェクトをきっかけに、ジャズやロックなどの他ジャンルでも、YouTubeを使った新しい試みが出てくることを期待しているそうですが、今回YouTubeの合法的でクリエイティブな使い方をいくつも皆に提示して見せたという点でも大きな成果だったのではないかと思います。

コンサート内容は、様々な時代、様式の作品を映像も駆使しながら紹介するものでした。1曲毎に時間も空間も違う地点にジャンプする構成でしたが、これら性質の違う作品を違和感なく披露できたのではないかと思います。YouTubeのコメントにいろんな場所に足を運んだかのようだったと入れている方がいましたから、ティルソン・トーマスの多様性を知ってもらうという狙いは成功だったのではないでしょうか。

私はやはり今回のプロジェクトは、新しいテクノロジーを使ってクラシック音楽が何ができるかを試したことに大きな意義があったと思います。

そしてティルソン・トーマスが言っていたGoogle, YouTubeのテクノロジーでクラシック音楽をcivilization した(世界中の多くの人々が参加でき、また世界中の人々に音楽を知ってもらえる場所に出せた)こと、さらにまだまだ可能性が広がっているということを示せた点が、一番の成果ではないでしょうか。

今回のMTTを総括

ティルソン・トーマスは、事前にオーケストラ・メンバー全員のオーディション映像を見、どういう人がどういうレベルなのかを全て把握し、リハーサル初日に登場した時点で、何をどこから始めるか完璧に準備してあったそうですが、このプロジェクトに対するコミットメントと執念は圧倒するパワーがありました。

そして鮮やかなリーダーシップを発揮していましたが、これは日頃からの脇をブレインで固めているチームMTT、サンフランシスコ・ベイエリアの知力の結集、ティルソン・トーマスがキャリアを通じて試してきた企画の数々、彼とともに新しい時代を切り拓こうと集まっている類は友を呼ぶアーティスト、人海戦術可能な若いマンパワーの提供と音楽教育者のネットワークの二面で大きな力となったニュー・ワールド交響楽団の存在なしには実現しなかったのではないかと思います。

ティルソン・トーマスの現在を知ってもらうという観点で今回のプロジェクトを見ると、MTTの今を知らない人にも、

  • 人気
  • リーダーシップ
  • プロデュース力
  • ショウマンぶり
  • アプローチが intellectual

という点は十二分に伝わったと思います。他方でティルソン・トーマスを聴く面白さというのは、練り上げのアイディアとそれを実現させる完成度の高さにあり、その観点に立つと、今回は演奏を破綻なくまとめるという点に神経の多くを使っていたように見受けられ、MTTの今の境地を知るという点では、6割くらいの伝達度だったように思います。

またMTTの場合、指揮のビジュアルも非常に楽しませてくれるわけですが、今回そこに気をかけていない映像だったのと、無難に振っていたこともあり、そこも見た人に伝わらなかったかなと思いました。

いつもあんなにしゃべっているのかと思われたかもしれませんが、皆の知らない曲を取り上げるときは話をしています。時間はせいぜい2分くらいです。

今回YouTube Symphony Orchestra の映像を見て、MTTって?と思った方は、ぜひサンフランシスコ交響楽団とのCD、DVDをお試しください。

(2009.4.18)

Tag: MTT

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