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ヴァルトビューネのブロンフマンと考えるオーケストラのアウトリーチ活動

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ヴァルトビューネのブロンフマンと考えるオーケストラのアウトリーチ活動

発売間もないベルリン・フィルのヴァルトビューネ・コンサート2009のブルーレイが、ユニオンに出ていました(中古)。これは即買い。

でもこんなに早く手放す人がいるなんて、訳ありなんじゃないか?

ということで早速見てみると、

ブロンフマンによるラフマニノフのピアノ協奏曲第3番で、1楽章のカデンツァ~2楽章にかけて、ずっと子どもの泣き声が入っているのです。はっきりと、継続して。

最初空耳かと疑ったのですが、巻き戻しても同じところで聴こえる。

さらにコンサート後半では雨が降って来て、春の祭典のバックにずっと雨の音がします。

こういう映像を見たのは初めてだったので、記録として興味深いと思いました。

ブロンフマンは立派だった

子どもの声は静かなところに限って「びゃーーーー」とずっと続く(必死にあやしているお母さんらしき後ろ姿も一瞬映る)のですが、ブロンフマンは嫌な顔ひとつせず、声の方を見やったりもせず(オーケストラ・メンバーはさすがに見ていました)、集中力を全く切らすことなく弾き切っていて、私はその姿にとても感動しました。これぞ職業音楽家。

1楽章の再現部で(元々そうリハーサルしていたのでしょうが)泣き声にもかかわらず、ものすごく繊細な表現を貫いたラトルも素晴らしかったです。

ヴァルトビューネのお客さんは、普段フィルハーモニーに来ている人たちよりずっと幅広い層(2万人いたそう)だと思いますが、私はたとえ演奏中に泣かれても入場を制限したりしない方がよいと思います(もっとも映像を見た限りでは、子どもはほとんどいない?)。

PA通したベルリン・フィルはどんな音で聴こえるのでしょう?いつも寒そうと思うけれど、一度会場で聴いてみたい。

ところでブロンフマンのピアノ

ラフマニノフの曲のせいもあるのかもしれませんが、火の玉のように弾いていました。

彼はMTTワールドの主要な登場人物の一人でサンフランシスコによく来ますが、ティルソン・トーマスと一緒のときは、MTTの構築する音楽との対峙でもっと相対的にポジションをとっているように思います。

指揮者によって自分の立ち位置も弾き分けているのだとしたら、益々すごい。

その後コンサートはどうなったか?

ブロンフマンのピアニズムでボルテージが最高に上がったコンサート前半。

そのままコンサートは盛り上って進むのかと思いきや、コンサート後半は

お客さんが皆カッパを着たり、ビニールをかぶったりしたことも影響したのかもしれませんが、春の祭典は平凡な演奏でした。

特に第二部の始めの静かな部分で、オーケストラ・メンバーの心がバラバラなように私には聴こえました。

コンサート前半があんなに盛り上ったのに、やはりコンサートは水もの。

でも最後のアンコール「ベルリンの風」でまた盛り返し、めでたしめでたしでコンサートは終わる。

こういうソフトを売るべきか?

この映像、記録としては本当に面白いけれど、純粋に音楽を聴きたい人はやはりノイズが気になると思います。

なぜノイズにもかかわらず発売されたのか考えると、

マメに収益化したかった
ヴァルトビューネを楽しみにしている人がたくさんいる

の両方の理由があるのかなと思います。ベルリン・フィルが多くの人に愛されていることや幅広い層にクラシック音楽を届けていることをアピールするという点では、今回の映像は最強なのではないでしょうか。

ブロンフマンがはからずも、コンサートホールとは違う環境や条件下でクラシック音楽を多くの人に届けるという大義はあっても、芸術家として受け入れ難い場面に直面したときにいかに行動するか?という問いへの一つの答えを見せたという点においても、

一見の価値ありです。

(2010.7.21)

【追記】
ウィーン・フィルのシェーンブルン宮殿のコンサート映像も発売なのですね。時代が変わったことを痛感します。

スターウォーズは画期的取り組み。ちらっと見た限りではカッコ良くないところもウィーンらしくていい。

Tag: 経営

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