オーケストラで “社会に新たな価値を創造するチャレンジ” を考えてみるサイト

これは傑作だ!アイヴズのコンコード・シンフォニー

トップ>here

これは傑作だ!アイヴズのコンコード・シンフォニー

今シーズンのティルソン・トーマス&サンフランシスコ交響楽団の注目プログラムの一つは、アイヴズのコンコード・シンフォニー(A Concord Symphony)を初めて取り上げること。

この作品は、アイヴズのピアノ・ソナタ第2番 Concord, Mass., 1840-60 をカナダの作曲家ヘンリー・ブラントがオーケストレーションしたもの。

アイヴズがスケッチから第二稿を完成させるのに44年かかり、その後ブラントが本業の合間をぬってライフワークとしてオーケストレーションに取り組んだため、編曲に36年かかり、コンコード・シンフォニーとして世に出たのが、アイヴズのスケッチから90年後の1994年だったという壮大な話。

なぜアイヴズが作曲するのに時間がかかったかというと、アイヴズは会社経営の傍ら作曲をやっていたため、音楽でお金を稼ぐ必要がなく、また演奏される予定もなかったため、締め切りも妥協する必要もなくていつまでもやっていたのだそう(とても説得力がある理由)。

アイヴズの父親は、有名なバンド・マスターで職業音楽家だったわけですが、チャールズをイエール大学に入れる学費に苦労し、亡くなるときにプロの音楽家にはなるな、他で生計を立てなさいと言い残したというから、何と賢明なアドバイス。

私はMTTを聴くようになるまでアイヴズを聴いたことがなかったのですが、最初にアイヴズの写真を見たとき、

この人は何て人相が良いのだろう

と思いました。KEEPING SCOREで映った奥さんの写真を見たら、奥さんも人相がいい。

こんなに人相がいいって、何かあるに違いない

と興味を持ちました。

コンコード・シンフォニー

さて、コンコード・シンフォニーは、Emerson, Hawthorne, The Alcotts, Thoreau の4楽章からなり、アイヴズが影響を受けた思想家の名前(Alcottsは、ボストンのアイヴズが尊敬していたサロンみたいな交流の場の名前)からとっています。

ティルソン・トーマスは演奏前に、この曲はアメリカ音楽のマイルストーンであると話していました。各楽章を「ヒトコトで言えば」風に紹介し、いろいろ起きるが最後まで行くと全体像が見えると言っていました(“survival”と表現していた)。

曲は大編成で音が多く、要素が多すぎてうまく説明できないのですが、ピアノ曲からここまでイマジネーションが広がるのかというくらい、鮮やかなオーケストレーションです。それでいてアイヴズの交響曲からの一貫性もきちんと感じられる。フォークソングやジャズっぽい部分、教会の賛歌などを素材にした部分もそれ以外の素材とのマッチングが全然違和感ありません。

原曲プラス編曲の一体が、めったに生まれないような傑作。

サンフランシスコ交響楽団は、いつもの調子でやっていました。非常に完成度高く仕上がっています。KEEPING SCOREのときもそうでしたが、大音響最大値~いきなり遥か遠くから透徹された響きがかすかに聴こえる~みたいな表現と、弦の細かいニュアンスに磨きがかかっていました。リズミックな聴きどころも満載。不協和音でも全く濁らないクリアな響きです。

MTTは決めがいくつも入っていましたが、曲が複雑なので、基本は人間メトロノーム(に見える)。私が聴いたのは4公演あるうちの最初の2日だったのですが、特に2日目、演奏がうまく行ったため、終わってからガッツポーズを2回もしていました。

これはぜひとも多くの人に聴いてもらいたい作品

録音が iTunes で販売されます

というわけで、このコンコード・シンフォニーは、iTunes で販売されます(発売時期は未定)。

今回、通常の KDFC 用の録音セッティングよりもかなり多くのマイクがセッティングされていました(とは言っても、マーラーの半分以下。一般的なオーケストラのライブ録音のセッティングよりは大掛かり)。咳するなのアナウンスはなし。

販売用に編集すると言っていたので、どんな出来上がりになるか楽しみ。

シューベルトのミサ曲第2番

コンサートの前半は、シューベルトのミサ曲第2番でした。今オーケストラも SFS コーラスも非常に状態がよいので、それを反映した演奏だったと思います。

ただ、ソプラノのソリストが、横に大きい体型でビブラートをガンガンにかけて歌うという、最近めっきりいなくなったタイプで、MTTの音楽には合わない。いつもは事前にフィルターがきっちりかかるはずなのですが。でもソリストとオーケストラのソロがからまるところは、きれいでした。

Leah Crocetto soprano
Thomas Cooley tenor
Patrick Carfizzi bass-baritone

これがウワサの送迎バス

ところで、4日(木曜日)の公演はマチネー(2時開演)でした。この木曜マチネー、サンフランシスコ交響楽団はベイエリアの街に送迎バスを運行しています。

家の近くから楽ちんでやってくるシニアの方々でいっぱい。
バス

送迎バスはバリアフリー仕様。この手のバスが4台。この他、ツアーの観光バスも3台ありました。

サンフランシスコ雑感

サンフランシスコ中いたるところが「greener」をやっている(日本でいうところのエコ活動)。レストランやカフェは相変わらず賑わっている印象を受けますが、マーケット・ストリート(目抜き通り)は空き店舗のままが結構ある。サンフランシスコではネットで買えてかつそれで足りるものに関しては、もう店舗がない?トヨタのリコールは、こちらではとても大きな話になっています。新聞にトヨタが載せた文章のアメリカ人への気遣い度にビックリ。

(2010.2.4)

Tag: コンサート

powered by Quick Homepage Maker 5.1
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. QHM

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional